第9回 光中継器と光アンプ
図9-1 光ファイバ最大伝送距離
光アンプには二つの種類があります。半導体レーザ・アンプ(LD)とファイバアンプEDFA(Erbium-Doped Fiber Amplifier)です。LDアンプは、構造的にはレーザ・ダイオードそのものです。LDにはバイアス電流が流され、一方の端面から受光し、他端面から増幅された光信号が出力されます。LDは波長選択性はあまりないので、広範囲な波長を増幅できます。しかし欠点もあります。光ファイバとの結合損失が大きいことと、偏光依存性があるということです。
一方、EDFAの原理は入射光による誘導放出を利用しています。少し難しいかもしれませんが、つまり、入射光は励起(energize)された電子が次々とエネルギをもらいます。この過程で光増幅が可能となります。LDと違って偏光依存性がありません。光ファイバの構造そのものであるため、接続が容易で、低損失です。励起光のパワーを大きくすれば、常に大きな増幅度になります。欠点としては、波長選択性が強くて、増幅される波長の幅が狭いことにあります。
図9-2に光中継器のシステムの一例を示します。この中継器は、O→E、E→Oの変換の組み合わせですが、信号処理のしかたでいろいろなタイプに分類できます。図に示した例は、クロック回路による識別再生を行うもので、長距離伝送が可能な中継器です。PDはPhoto Diodeで、O→E、LEDはLight Emitting DiodeでE→Oです。増幅器は従来の電気のPCM伝送(Pulse Code Modulation;パルスコード変調方式)と同じ等価増幅器を使っています。この中継器は上記の光アンプと違い、光信号を一度電気に変換し、信号処理後または光信号に変換して送信するために、設備コストが高いのが欠点です。最近では、光アンプの高性能なタイプの開発が各社から報告されており、将来は光アンプの多用が期待できます
図9-2 光中継器のシステム例
/エイブス技術翻訳スクール 校長・疋田正俊
第8回 変調方式と波長分割多重
変調方式(modulation)
一般的に変調方式には、アナログ方式とディジタル方式の2種類があります。アナログ方式には信号の振幅、周波数、位相の3要素を変化させてデータ信号を伝送します。データとしての波形は連続的に変化していきますから、ノイズの影響や歪みが発生すると受信側では正確なデータを復元(demonstration)できなくなります。長距離や多段の中継には向いていません。しかしながら、変復調回路(modem)は簡単な構造であり、信号帯域も狭いのが利点です。
ディジタル方式では、信号パルス(例:0と1)の有無でデータを伝送するので、歪みが多少入っても、またノイズに少しぐらい影響されても元のデータに戻すことができます。従って、中、遠距離に向いています。アナログとは逆に複雑な符号化(coding)および変復調回路が必要であり、コストがかかります。図8-1に各種変調方式の波形を示します。
21世紀はFTTH(Fiber To The Home)から始まるといわれていますが、これは現在の多重の電気信号を、そのまま光伝送して各家庭に伝送することです。複雑な変復調機器なしで、同軸ケーブルを光ファイバに変えるだけで、将来のシステム展望やコストを考えると、都合が良いのです。FTTHのアイディアの一例を図8-2に示します。現実的には、全国的な幹線の光ファイバ布設は容易ですが、各家庭への接続の部分でNTTが自社の既得権利をどのように開放してくれるかにかかっているでしょう。
電気信号が周波数分割多重するように、光信号でも波長分割多重をします。発光スペクトルの波長の広がりがオーバーラップしない範囲で、隣同士の波長を近づけることができます。1本のファイバで多数の信号を伝送しても、互いに影響はまったくないので、多重化が可能なのです。例えば、一つの信号をアナログ伝送、もう一つをディジタル伝送してもまったく関係ないのです。伝送方向が逆であっても同様です。ただ各波長ごとに光信号を区別するためには、波長選択を行う分波器(branching filter)が必要です。
第7回 受光素子
光通信の主役三人衆ということで、光ケーブル、発光素子、受光素子がありますが、この連載の第5回で光ケーブル、第6回で発光素子の解説を行いました。今回は受光素子について説明します。この三人衆の関係は、図7-1を見てください。
半導体は、外部からの刺激(stimulus)に非常に敏感です。たとえば、電界(electrical field)、光などに対する反応が優れています。従って半導体は電界や光のセンサとしても利用されています、光センサ(optical sensor)としては、光導電セルのCdS(硫化カドミウム;cadmium sulfide)、フォトダイオード、フォトトランジスタなどがあります。
私達は気がつかないところで、すでにこの発光・受光素子を利用しています。例えばTV等のリモコンです。リモコンの先からは、目には見えませんが、赤外線(infrared rays)が出されています。この赤外線を出すのは、赤外発光ダイオードです。リモコンを押すと、ダイオードから赤外線が出て、TVの受光ダイオードによってキャッチされ、スイッチをオン/オフしたり、チャンネルを切り替えるのです。
受光素子としては、光導電型(photoconductive)、光起電型(photovoltanic)、熱電効果型(thermoelectric effect)、光電子放出型(photoelectron emission)があります。光導電型にはCdS、PbS(硫化鉛)、Se(セレン)などがあり、光起電型にはフォトダイオード、太陽電池(solar battery)、フォトトランジスタ、アバランシェフォトダイオード(APD;avalanche photodiode)など多数あります。アバランシェとは「なだれ現象」という意味です。熱電効果型、光電子放出型については省略し、フォトダイオードについて構造と原理を分かりやすく説明しましょう。
フォトダイオード
図7-2を見てください。フォトダイオードは、pn接合を持つ半導体で、光起電効果を示す基本的な素子です。(a)において、pn接合に光が当たると、電子と正孔のペアが生成され、p領域には正孔が、n領域には電子が集まります。これらがプラスとマイナスの電極を通じて光電流として取り出されます。SiO2(二酸化シリコン;silicon dioxide)は絶縁保護膜としての役割です。(b)はその電流電圧の特性曲線です。破線は光がない場合の電流電圧曲線です。これは一般のダイオードの特性と同じです。入射光線があると、曲線は下のほうにずれていきます。このずれ方は入射光量に比例します。短絡時(電極のプラスとマイナスをつなぐ)には、電流ICOが得られ、開放時(両端がオープン)には、電圧VCOが得られます。この関係を等価回路(equivalent circuit)で(c)に示します。フォトダイオードは、測定可能な光の強度範囲が広く、応答性も良好なため、いろいろな光信号の受信用に利用されています。図7-2(a)の中で、pとnの間に絶縁層(insulation layer)を挿入すると、PINダイオードになります。応答が速く、光電流特性が良好で、いろいろなケースに利用されています。
その他の受講素子
また、アバランシェフォトダイオードは、微弱な光の検出に多く利用されています。詳細原理は略します。