翻訳に役立つ科学講座

1999年~2000年「通訳翻訳ジャーナル」(イカロス出版)に連載していたものを元に再構成しています

第5回 ダイオードとpn接合

p型半導体はシリコンにホウ素(boron)等を添加したものです。この半導体には正の電荷を持つ正孔(hole)が多く(rich)あります。ホウ素のように正孔を作り出す添加物をアクセプタ(acceptor)と呼びます。一方、n型半導体はリン(phosphorus)等をシリコンに添加したもので、負の電荷を持った電子が多くあります。このリンのような役目を持った物質をドナー(donor)といいます。

pn接合とはこのp型半導体とn型半導体を物理的に接合したものをいいます。半導体素子とは、このpn接合をいろいろ組み合わせて、電子的な性能を作り出しているものともいえます。

図で説明すると図5-1になります。(a)はp型半導体とn型半導体を接合したところです。(b)では接合面の近傍でプラスの正孔とマイナスの電子が互いに拡散していき、電気的に中和されるところを示しています。(c)では中和された部分が空乏層(depletion layer)となって電気的な障壁(barrier)が形成されることを示しています。

ダイオードとはこのpn接合(pn junction)を利用した素子のことをいいます。図からわかるようにpn接合の両端にリード線をつければダイオードです。図5-2(a)のようにp型に電池のプラス、n型に電池のマイナスを接続すると(順方向バイアス)、p型の正孔は電池のプラス極に反発してマイナス側に移動し、逆に電子(マイナス)は電池のマイナス極に反発してプラス側に移動します。プラスとマイナスの電荷が行き交う、すなわち電気が流れたことになります。逆に(b)のようにプラスとマイナスを入れ替えると(逆方向バイアス)、正孔とマイナス極、電子とプラス極は引き合い空乏層は更に大きくなります。すなわち電気は流れません。このようなダイオードの作用を整流(rectification)といいます。又これら伝導電子と正孔を合わせてキャリア(carrier)といいます。

 

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/エイブス技術翻訳スクール 校長・疋田正俊
 
この原稿は、1999年~2000年「通訳翻訳ジャーナル」(イカロス出版)に連載していたものを元に再構成しています。