翻訳に役立つ科学講座

1999年~2000年「通訳翻訳ジャーナル」(イカロス出版)に連載していたものを元に再構成しています

第4回 半導体

半導体の「ダイオード」や「トランジスタ」などの基本素子について、避けて通うろうとする方がいますが、感心しません。技術翻訳には、コンピュータ翻訳であれ、通信マルチメディア関連、特許やその他の産業の翻訳であれ、半導体は必ず出てきます。翻訳家としては、少なくとも基本的な動作を理解する必要があります。今回は、これをイメージ的にわかりやすく説明しましょう。

金属には動ける電子が多くあり、絶縁体にはほとんどなく、半導体には少しあるということです。この少しあるというのがミソで、不純物(impurity)を添加(dope)してこの量を加減することで電気を通したり、止めたりするメカニズムを作ります。不純物とはホウ素(boron)とかリン(phosphorus)などです。

図で説明すると、絶縁体は価電子帯(充満帯,full bandともいう)と伝導帯のエネルギ・ギャップが大きいので、電気や光などのエネルギが加えられても、電子は禁止帯を超えて伝導帯には移動できません。動く電子がないので、すなわち絶縁体です。良導体の金属には、禁止帯がありません。電子はエネルギをもらえば容易に動くことができます。すなわち電気が流れるのです。半導体にはいろいろな分類の仕方がありますが、一般的には3つのタイプに分けます。真性(intrinsic)半導体、p型(p-type)半導体、n型(n-type)半導体です。真性半導体は例えばシリコン(silicon)単体そのものであり、p型半導体はホウ素等の不純物を加えたもの、n型半導体はリン等を加えたものです。
 
電子の持つエネルギについて
物質を構成する原子は陽子(proton)、中性子(neutron)を中心にして、電子(electron)が外側に配置された構造をしています。陽子や電子の構成のあり方で、シリコンになったり、酸素になったりします。原子の性質は、主に一番外側の電子のエネルギ状態によってきまります。これらエネルギの高低の幅を、エネルギ帯(energy band)といいます。物質は電気の良導体の金属、半導体、絶縁体の3タイプに大別されます。エネルギ帯で表現すると図4-1の様になります。

伝導帯(conduction band)
電子が自由に移動できるエネルギ準位(energy level)の高い状態です

価電子帯(valence band)
原子内に電子が束縛されているエネルギ準位の低い状態です

禁止帯(forbidden band)
電子がこのエネルギ レベル(エネルギ準位)を持てないということです
 
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図4-1 物質のエネルギバンド構造
 
/エイブス技術翻訳スクール 校長・疋田正俊)
 
この原稿は、1999年~2000年「通訳翻訳ジャーナル」(イカロス出版)に連載していたものを元に再構成しています。