翻訳に役立つ科学講座

1999年~2000年「通訳翻訳ジャーナル」(イカロス出版)に連載していたものを元に再構成しています

第2回 光通信システムの構成

光通信の基本的な要素を図2-1に示します。信号は、先ず変調され(modulate)、次に電気から光にと変換(transform)され、伝送路(transmission line)を通って、今度は逆に光から電気へと変換され、復調(demodulate)され、最後に信号出力として取り出されます。変調とは、簡単にいうと搬送波(carrier wave :信号を運搬するための電波)に信号を載せてやることです。復調とは、逆に搬送波を除いて信号のみを取り出すことです。喩えていえば、新幹線(搬送波)と乗客(信号)の関係と似ています。変調、復調とは乗客の乗せ方、降し方といったところでしょう。それぞれのセクションの役割についてもう少し詳しく説明しましょう。

 

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図2-1 光通信の基本的要素

 
伝送路
一般に通信伝送路には無線と有線があります。無線には、簡単な例でいえば、テレビとリモコンの間の空間があり、又一般的には、遠隔地の通信用には大気圏があります。有線には従来の銅ケーブルと、最近注目の大容量伝送の光ファイバケーブルがあります。ここでは光ファイバケーブルのことについて少し説明をしましょう。略して光ファイバともいいますが、構造等については次月号で詳しく述べます。これは石英ガラスの細い線からできており、光信号を通す内側のコア部分と光を反射する外側のクラッド部分からできています。コア部分とクラッド部分では屈折率が異なり、低い屈折率のクラッド部分が光信号をコア内に閉じ込める役割をしています。要するに、屈折率の差によってコアから出ようとした信号はクラッドとの境界面で全反射され、損失がほとんどなく遠くに伝わるのです。
 
電気/光変換、光/電気変換
電気信号を光信号に変換する素子と、光信号を電気信号に変換する素子の両方が必要です。前者はLED(Light Emitting Device:発光素子)等を使い、後者はこの逆でPD(Photo Diode:受光素子)等を利用します。LEDは電気によって発光し、PDは光を検知して電気を発生する素子です。光の特長として電磁誘導(electromagnetic induction)を受けない、従って雷とか高圧線の影響を受けないし、又外への干渉、妨害もないという、すばらしい利点があります。一方でマイクやスピーカは、電気の磁気的性質を利用していますから、光ではなく電気を使わざるをえません。光通信といっても伝送路が光ファイバであり、信号の入口と出口は将来的にも電気を利用した機器でしょう。しかしこの伝送路が光ファイバになったことで、通信技術は飛躍的に進歩し、送れる情報量も桁違いに多くなったのです。
 
/エイブス技術翻訳スクール 校長・疋田正俊
 
この原稿は、1999年~2000年「通訳翻訳ジャーナル」(イカロス出版)に連載していたものを元に再構成しています.。