翻訳に役立つ科学講座

1999年~2000年「通訳翻訳ジャーナル」(イカロス出版)に連載していたものを元に再構成しています

第1回 光の粒子性と波動性

光は波か、粒子か?

光は波waveか、それとも粒子particleか?という論争は遠くギリシャの時代からあったらしいのです。光は直進するということ、物体に当たると入射した角度と同じ角度で反射されるということや、光が水面の波のようにうしろ側にまわりこむ「回折diffraction」や、「干渉interference」なども波動性として分かっていたようです。

物理の教科書を読むと必ず出てくるのがこの粒子説と波動説の論争です。この論争はニュートン粒子説の時代にも引き継がれ、彼はフック波動説と対立しました。20世紀初頭、天才アインシュタインの出現により、光子説を導入した量子論が彼およびその他の研究者達によって唱えられ現在に至っています。解決したかに見えるこの論争は、結論としては、何と、光は粒子でもあるし波でもあるというものです。要するに波でないとうまく説明できない現象、粒子でないと説明できない現象は依然としてそのままなのです。

 
光と電波
光は電波と同様に電磁波(electromagnetic wave)の一種です。読者が知っておられるX線ガンマ線、赤外線、紫外線や可視光線も全てこの電磁波です。電波とは日本においては、波長が約0.1mm以上の電磁波のことです。光は波長が更に短く約1nm(10-9 m)~1mmであり、光通信はこの光の波としての性質を利用しています。光の性質について少し触れておきましょう。
光は横波(transverse wave)であり(cf.音波は縦波:longitudinal wave)その進行方向に対して直角な電界と磁界の振動(波動)を持っています。図1-1にそのイメージを示します。
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図1-1 電磁波(光)の性質
 
山と谷が交互にきていますが、波長とは一つの山と一つの谷の進行方向の長さをたした値です。1秒間にこの山谷が何回現れるかが周波数(振動数)です。従って、波長×周波数=1秒間に光が伝わる距離です。このことは基本中の基本ですので是非理解して下さい。普通、光はいろいろな周波数をもった電磁波の集合ですが、光通信に使う光はある一定の周波数であり、レーザ(laser, light amplification by stimulated emission of radiation)によって発光されます。
 
/エイブス技術翻訳スクール 校長・疋田正俊
 
この原稿は、1999年~2000年「通訳翻訳ジャーナル」(イカロス出版)に連載していたものを元に再構成しています.。